令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
昼休み、芙美はオフィスのデスクで書類を整理していた。パソコンの画面には、広報資料のデータが映し出されている。ふと、スマホに通知が届いた。メールの件名は「ランチ、どうですか?」。送り主は三浦侑。
「……え、今日?」
芙美は思わず声を漏らし、頬がじんわりと熱くなるのを感じた。心臓が小さく跳ね、慌ててメールを開く。短いメッセージだったが、侑の穏やかな口調が、その文字から伝わってくるようだった。彼女は一瞬迷ったが、すぐに返信を打ち始めた。
「いいですよ、どこかで待ち合わせしましょうか?」
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥に小さな期待が灯った。仕事の合間の短い時間だったが、芙美はデスクを片付け、急いで準備を整えた。
二人はオフィス近くの小さなカフェで落ち合った。並んで歩く足並みが自然と揃い、互いの視線がちらりと交わるたびに、芙美の胸は軽く高鳴った。カフェのカウンターで注文を済ませ、窓際の小さなテーブルに座る。ランチのサンドイッチとコーヒーが運ばれてくると、会話は自然に弾み始めた。
話題は仕事のことから始まり、最近読んだ本、この街の好きな場所、ちょっとした冗談まで広がっていく。侑の軽い笑い声や、話を聞くときに少し首を傾げる仕草が、芙美の心をそっとくすぐった。
――こんな時間が、自然に訪れるなんて。
芙美は、心の奥で静かにそう思った。侑との会話は、まるで長年の友人のように自然で、なのにどこか特別な輝きを放っていた。彼女は、こんな風に誰かと心からリラックスして過ごす時間が、こんなにも心地よいものだとは思っていなかった。