令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 夜、芙美はアパートのベランダに出て、いつものように夜空を見上げた。都会の光に少し霞む星々が、静かに瞬いている。昨日も今日も、侑とのほんの少しだけ特別な時間があった。その時間が、まるで心の奥に小さな灯をともすように、彼女を温めていた。
 ――この人との時間が、こんなにも心地いいなんて。
 芙美は、胸の奥でじんわりと広がる温かい気持ちに、そっと微笑んだ。恋という言葉にまだ遠慮があったが、侑との日常が、彼女の心に静かな彩りを加えているのは確かだった。
 同じ空の下、侑もホテルの窓辺で、コーヒーカップを手に夜空を見上げていた。芙美の笑顔や、公園でのさりげない会話が、頭に浮かぶ。彼女との時間が、まるで新しいデザインのスケッチのように、彼の心に鮮やかに描かれていた。
 ――日常に忍び込む恋の予感。
 侑は、スマホに映る芙美の名前を眺め、口元に自然な笑みが浮かんだ。互いに心を寄せながらも、まだ穏やかな距離感を楽しんでいる。この日々が、二人の物語を少しずつ豊かに彩っていく――そんな確かな感覚が、彼の心に根付いていた。
 
< 43 / 131 >

この作品をシェア

pagetop