令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 少し間を置き、侑は深呼吸して言葉を続けた。
「……芙美さんといると、すごく自然に笑える。楽しい。……その、僕は、芙美さんのことを、ただの同僚以上に意識しています」
 その言葉が、芙美の胸の奥に熱い波を起こした。一瞬、言葉が出なかった。彼女の頭には、侑とのこれまでの時間が、まるで走馬灯のように駆け巡った。カフェでの偶然の出会い、図書館での静かなひととき、美術展での肩の触れ合い。すべてが、まるで一本の糸で繋がれているように感じられた。
 だが、心の奥で、芙美は同じ気持ちを抱えていたことに気づいた。侑の穏やかな笑顔、誠実な言葉、そばにいるだけで感じる安心感。それらが、彼女の心に静かな火を灯していた。
「私も……同じ気持ちです」
 小さな声だったが、その言葉は、夕暮れの風に溶けながらも、確かに侑に届いた。彼女の頬がほのかに赤らみ、自然と笑みがあふれた。


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