令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
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二人は、街中の美術館やカフェを巡る小さなプランを立てていた。駅前から歩き始め、街の通りを並んで進む。会話は、互いの趣味や好きなもの、最近の出来事へと自然に広がっていく。侑が好きな抽象画の話、芙美が最近ハマっている写真集の話題。会話の端々に笑い声が混じり、街の景色が、まるで二人だけの特別な舞台のように輝いて見えた。
美術館の静かな展示室で、二人は絵画や彫刻の前をゆっくりと歩いた。光が差し込む広い空間で、侑がふと一枚の絵の前で立ち止まる。淡い色合いの風景画をじっと見つめる彼の横顔に、芙美は心がじんわりと温まるのを感じた。
ふと、侑が手を差し出した。
「芙美さん、こっちの展示も面白いですよ」
その自然な仕草に、芙美は一瞬驚いたが、すぐに微笑んで彼の手を取った。温かさがじんわりと伝わり、彼女の心臓の奥で小さな火花が散った。
「手、冷たくないですか?」
侑が少し照れたように言うと、芙美の頬がほのかに赤くなった。
「ええ、大丈夫です……ありがとう」
小さな距離感が、彼女の心を軽くざわめかせた。侑の手の温もりが、まるで心の奥にそっと触れるようだった。二人は手を繋いだまま、次の展示へと進んだ。