令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第12話 すれ違う想い
週明けの月曜の朝。
吉川芙美はオフィスに着くなり、少し沈んだ気持ちでデスクに座った。いつものようにパソコンを立ち上げ、広報資料の確認を始めるが、心はどこか別のところにあった。昨日、侑とのメッセージのやりとりで感じた、ほのかな違和感が、彼女の胸に小さな影を落としていた。
――どうして、あの返事はあんなに短かったんだろう……?
楽しかった初デートの余韻が、まだ心に温かく残っているはずだった。
あの夕暮れの公園での手の温もり、侑の穏やかな笑顔、視線の交錯。それらが、まるで春の陽だまりのように、芙美の日常に新しい色を塗っていた。なのに、昨日のメッセージは、いつもよりそっけなく、どこか距離を感じさせるものだった。たった数行の言葉が、彼女の心にモヤモヤを膨らませていた。
芙美は、コーヒーカップを手に持ちながら、窓の外を眺めた。オフィスビルの窓からは、街のビル群と、遠くの街路樹が揺れる姿が見える。いつも通りの朝の風景なのに、今日に限っては、どこか色褪せて見えた。
恋愛に慎重だった自分。それでも、侑との時間が、彼女の心に新しい扉を開いていた。だが、この小さな違和感が、その扉に微かな隙間を作っているように感じられた。
――私が気にしすぎなのかな……。
芙美は小さく息を吐き、気持ちを切り替えようとキーボードに手を置いた。だが、心の奥のざわつきは、簡単には収まらなかった。