令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
その頃。三浦侑もまた、心中で複雑な思いを抱えていた。出張先のホテルの部屋で、朝のメールチェックをしながら、彼は昨日のことを思い返していた。芙美からのメッセージに気づくのが遅れ、仕事の合間に急いで短い返信を送ってしまっただけだった。
だが、送信ボタンを押した後、ふと胸に引っかかるものがあった。彼女の返信が、いつもよりどこか控えめだったこと。彼女が気まずそうにしているかもしれないことに、ようやく気づいたのだ。
――せっかくの関係が、こんな小さなことで不安になるなんて……。
侑は、普段は冷静で、デザインの仕事に没頭するタイプだった。細部にこだわり、全体のバランスを見極める――それが彼の日常だった。だが、芙美との出会いは、その日常に新しいリズムを刻んでいた。
彼女の柔らかな笑顔や、話すときに少し髪を耳にかける仕草が、なぜか頭から離れない。昨日のそっけない返信は、忙しさの中でつい気を抜いてしまった結果だった。だが、それが彼女の心にどんな影響を与えたのか、考えるほどに侑の胸は重くなった。
――ちゃんと話したい。でも、仕事が……。
侑は、資料に目を落としながらも、頭の片隅で芙美のことを考えていた。仕事の予定が立て込んでおり、すぐに会って話すことは難しい。それでも、彼女の心に誤解を残したくない――そんな思いが、彼の心を静かに揺さぶっていた。