令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~


 昼休み、芙美は同僚の美咲とオフィス近くのランチスポットで食事をしていた。サラダとパスタを前に、いつもなら軽快に会話が弾むはずなのに、今日は心ここにあらずだった。ふとスマホを見ると、侑から短いメッセージが届いていた。
「後で電話してもいいですか?」
 その一文を読んだ瞬間、芙美の胸が一瞬高鳴った。だが、同時に、昨日の違和感を思い出し、不安がよぎる。
 ――何を話したいんだろう……。
 彼女はフォークを手に持ったまま、しばらく考え込んだ。侑の声が聞けるのは嬉しいのに、どこかで「何か悪い話かもしれない」という思いが頭をよぎる。返事を打つ手が、ほんの少し震えた。

「……うん、いいです」

 短い返信を打ち、送信ボタンを押す。メッセージが送られた瞬間、ほっとしながらも、心の奥のざわつきは完全には消えなかった。美咲が軽い口調で話しかけてくるが、芙美の心は、夕方の電話を待つことでいっぱいだった。


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