令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
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前菜が運ばれ、二人はグラスを軽く合わせて乾杯した。ワインの深い赤がキャンドルの光に揺れ、かすかなフルーティな香りが漂う。会話は自然に流れ、仕事の話から、最近ハマっている本や映画、この街の好きな場所へと広がっていった。言葉の端々に、甘さと優しさが滲む。
侑がふと手を伸ばし、テーブルの上で芙美の手をそっと取った。柔らかく、だが確かな温もりが指先を伝わる。芙美は一瞬息をのんだが、すぐに自然に手を握り返した。その温もりが、まるで心の奥にそっと触れるようだった。
「手、冷たくないですか?」
侑が少し照れたように言う。芙美の頬がほのかに赤くなり、微笑みながら答えた。
「ええ、大丈夫です……ありがとう」
二人は微笑み合い、言葉は少ないが、互いの心が確かに通じ合う瞬間だった。キャンドルの光が、芙美の瞳に小さく映り、侑の眼鏡の縁をほのかに照らす。レストランの静かな音楽と、遠くで響く街のざわめきが、二人を優しく包み込んでいた。