令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第18話 思わぬ出来事
吉川芙美は、朝のオフィスでいつものようにパソコンに向かっていた。窓から差し込む秋の光が、書類やキーボードを柔らかく照らす。昨夜の侑との時間――ピクニックの笑顔、手の温もり、夕暮れの静かなひとときが、まだ心に温かく残り、彼女はメールを確認しながら、ふと小さな笑みを浮かべる。
そのとき、携帯が小さく震えた。侑からの連絡だと期待して画面を見ると、知らない番号からの着信だった。少し躊躇しながらも、芙美は電話に出た。向こうから、少し焦った声が聞こえてくる。
「芙美さん、急でごめん……今日、少し 会えなくなりそうです」
侑の声だった。芙美の心臓が、突然早鐘を打った。
「え……何かあったんですか?」
彼女の声には、驚きと不安が混じっていた。楽しみにしていた今日の予定が、頭の中で一瞬にして揺らぐ。
「仕事でトラブルがあって……対応が長引きそうなんです。本当に申し訳ない」
侑の声には、誠実さと申し訳なさが滲んでいた。だが、芙美の胸には、小さな不安が芽生えていた。
――せっかく楽しみにしていたのに……。
彼女は、電話を切りながら、胸の奥でざわめく気持ちを抑えようとした。侑の誠実さを信じている。なのに、突然の予定変更が、まるで心に小さな影を落とすようだった。恋愛に慎重だった自分。それでも、侑との時間が、彼女の心に新しい光を投げかけていた。この光を失いたくない――その思いが、彼女の胸を締め付けた。