令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~


 昼休み、芙美は同僚の美咲とオフィス近くのカフェでランチを取っていた。サンドイッチを手に、いつもなら軽快に会話が弾むはずなのに、今日は心ここにあらずだった。
 スマホを何度も確認する手が止まらない。侑からのメッセージはない。仕事の報告メールに集中しようとしても、頭の片隅で彼の焦った声がリプレイされる。
 ――忙しいのはわかるけど……私との時間は、大丈夫かな?
 美咲が軽い話題を振ってくるが、芙美の返事はどこか上の空だった。窓の外では、街路樹の葉が秋風に揺れ、通りを行き交う人々が週末の気ままな時間を楽しんでいる。だが、芙美の心は、侑とのすれ違いに小さなモヤモヤを抱えていた。

 一方、侑もまた、仕事現場でのトラブル対応に追われていた。クライアントとの緊急会議、修正が必要な資料の山、そして次から次へと入る電話。頭の中は仕事でいっぱいだったが、ふと芙美の笑顔が浮かぶたびに、胸に小さな罪悪感が広がる。
 ――芙美さんに、ちゃんと連絡できてない……。
 彼女からのメッセージがないことに、侑もまた不安を感じていた。彼女が気まずい思いをしているかもしれない。その可能性が、彼の心を重くした。だが、業務の都合で、すぐに連絡するタイミングを見つけられず、互いにわだかまりが生まれる時間が続いていた。

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