令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
夕方、ようやく侑からメッセージが届いた。
「芙美さん、やっと落ち着きました……会えますか?」
その一文を読んだ瞬間、芙美の胸のモヤモヤが少し和らいだ。彼女はすぐに返信を打ち、仕事を終えて駅に向かった。
「はい、待っています」
短い返事だったが、そこには安堵と期待が込められていた。駅前の広場で、芙美はベンチに座り、秋の夜風に身を委ねた。街灯の光が歩道を柔らかく照らし、遠くで電車の音が響く。彼女の心には、侑に会える喜びと、今日のすれ違いを解きたい気持ちが交錯していた。
やがて、足音が近づいてくる。振り返ると、侑が少し息を切らしながら立っていた。カジュアルなジャケットに、眼鏡の奥で光る瞳。疲れた表情だったが、芙美を見つめる目は誠実さに満ちていた。
「ごめん、待たせてしまって」
侑の声には、申し訳なさと温かさが混じっていた。芙美は、その表情を見た瞬間、胸のざわつきが溶けていくのを感じた。
「大丈夫です、無理は言えませんから」
彼女は微笑みながら答えた。言葉は少なかったが、互いの顔を見た瞬間、緊張と安堵が入り混じった空気が流れた。二人は自然に手をつなぎ、駅前の公園に向かって歩き始めた。