令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 昼休み、芙美は会社近くのカフェで同僚の美咲とランチを取っていた。よく座る窓際の席で、サンドイッチとコーヒーが並ぶ。美咲の軽快な話に相槌を打ちながらも、芙美の心はどこか上の空だった。テーブルの上に置いたスマホに、つい目が向いてしまう。
 何かメッセージ、来てないかな……。
 そのとき、スマホが小さく震えた。慌てて手に取ると、画面には侑の名前が表示されていた。

【ごめん、朝から会議が続いてて。メッセージも打てなかった。夜、電話できる?】
 その一文を読んだ瞬間、芙美の胸に溜まっていたモヤモヤが、まるで霧が晴れるように溶けていった。安堵のため息が漏れ、口元に自然と笑みが浮かぶ。
「……なんだ、そういうことだったんだ」
 想像していた不安が、一瞬で消えた。だが、同時に、自分が小さなことでこんなにも揺れていたことに気づき、頬がほのかに熱くなる。
 良かった……。

 芙美は、スマホを握りしめながら、短く返信を打った。
【うん、夜なら大丈夫。待ってるね】

 送信ボタンを押すと、胸の奥に温かな安心感が広がった。



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