令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
その日、仕事に集中しようとしても、芙美の頭には同僚たちの会話がちらついた。パソコン画面を見つめながら、書類のチェックを進める手が、時折止まる。侑はきっと、誰に対してもあの穏やかな笑顔を見せているのだろう。仕事の場で、誠実で落ち着いた態度で接しているのだろう。それが彼の魅力だとわかっているのに、芙美の心には、どこか独占したいという小さな願いが芽生えていた。
――私が特別だと思いたいだけなのに。
昼休み、カフェで同僚の美咲とランチを取ったが、芙美の心はどこか上の空だった。サンドイッチを手に、美咲の話に相槌を打ちながらも、スマホをちらりと見つめる。侑からのメッセージはない。忙しいのだろうとわかっていても、胸のざわめきは収まらない。
その夜、芙美はアパートのリビングでソファに座り、スマホを手に待っていた。窓の外では、都会の光が静かに瞬き、遠くで電車の音が響く。侑との電話を待つ時間が、いつもなら楽しみなのに、今日は胸の奥に小さなモヤモヤが残っていた。