愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~
思えばタキが幾年生きているか、聞いたこともない。見た目は自分よりも少しばかり年下に見える稚さが残る容姿だが、彼女は物知りだ。そう考えると、実際はかなり年上だろうと改めて季音は思ってしまう。
「ねぇ。そういえば、おタキちゃんって輪廻から何年くらい経ってるの?」
「ん? 数えちゃいないが、だいたい百五十年以上は。獣の頃を含めれば二百年くらいか?」
ひぃ、ふぅ……と指折り数えてタキは眉根を寄せて小首を傾げた。ただそれだけで季音は驚いてしまった。そんなに年上だったのだと――。
「ほぅ。少し俺より年下か。俺は二百五十歳くらいだな」
朧はタキにそう言ってにやりと笑い、ふと視線を蘢に移した。燭の明かりが彼の山吹色の瞳を揺らし、どこか楽しげな雰囲気を漂わせていた。
「……僕も言うのですか?」
「この流れだとそうだろ? なんだよ犬っころ、実はまだ可愛い子犬だったか?」
その言葉に、蘢はむっとした表情で朧を睨みつけ、短く一つため息を吐いた。燭の揺れる光が彼の顔を照らし、不機嫌な影を濃く浮かび上がらせる。
「……石像に宿る前を含めたら千年近くは」
ぽつりと呟いたその言葉に、龍志を除く三匹の妖――朧、タキ、季音は一斉に目を丸くした。
「おい、嘘だろ犬っころ。お前、随分と爺なんだな……見かけによらねぇな。お前、こんな……ふわふわで可愛いのに」
「あんた下手すれば、おれよりずっと若く見えるのに意外だな」
「蘢様……とてもご長寿なのですね」
三匹が同時にそんなことを口にすると、蘢は恥ずかしさか酔いのせいか定かではないが、顔を真っ赤にして俯いてしまった。その小さな肩が、燭の明かりの下でわずかに震えているように見えた。
***
宴会は月が真上に届く夜半近くまで続いた。
その間、タキとは色んな話をした。再会した当初は微塵も話に耳なんて傾けてくれなかったのに、彼女はしっかりと話を聞いてくれた。どうやら龍志とも和解したようで、彼女は少し狡猾に笑ったり、嗜虐的な面を見せる彼に笑って突っかかったりなど、いつも通りのタキの顔を見せてくれた。
しかし、意外だったことと言えば……蘢が酒にめっぽう弱かったことだ。盃たった一杯で潰れてしまい、彼はすぐさま社の隅で龍志に寝かしつけられた。
「ねぇ。そういえば、おタキちゃんって輪廻から何年くらい経ってるの?」
「ん? 数えちゃいないが、だいたい百五十年以上は。獣の頃を含めれば二百年くらいか?」
ひぃ、ふぅ……と指折り数えてタキは眉根を寄せて小首を傾げた。ただそれだけで季音は驚いてしまった。そんなに年上だったのだと――。
「ほぅ。少し俺より年下か。俺は二百五十歳くらいだな」
朧はタキにそう言ってにやりと笑い、ふと視線を蘢に移した。燭の明かりが彼の山吹色の瞳を揺らし、どこか楽しげな雰囲気を漂わせていた。
「……僕も言うのですか?」
「この流れだとそうだろ? なんだよ犬っころ、実はまだ可愛い子犬だったか?」
その言葉に、蘢はむっとした表情で朧を睨みつけ、短く一つため息を吐いた。燭の揺れる光が彼の顔を照らし、不機嫌な影を濃く浮かび上がらせる。
「……石像に宿る前を含めたら千年近くは」
ぽつりと呟いたその言葉に、龍志を除く三匹の妖――朧、タキ、季音は一斉に目を丸くした。
「おい、嘘だろ犬っころ。お前、随分と爺なんだな……見かけによらねぇな。お前、こんな……ふわふわで可愛いのに」
「あんた下手すれば、おれよりずっと若く見えるのに意外だな」
「蘢様……とてもご長寿なのですね」
三匹が同時にそんなことを口にすると、蘢は恥ずかしさか酔いのせいか定かではないが、顔を真っ赤にして俯いてしまった。その小さな肩が、燭の明かりの下でわずかに震えているように見えた。
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宴会は月が真上に届く夜半近くまで続いた。
その間、タキとは色んな話をした。再会した当初は微塵も話に耳なんて傾けてくれなかったのに、彼女はしっかりと話を聞いてくれた。どうやら龍志とも和解したようで、彼女は少し狡猾に笑ったり、嗜虐的な面を見せる彼に笑って突っかかったりなど、いつも通りのタキの顔を見せてくれた。
しかし、意外だったことと言えば……蘢が酒にめっぽう弱かったことだ。盃たった一杯で潰れてしまい、彼はすぐさま社の隅で龍志に寝かしつけられた。