愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~

第20話 過去と今、交じり合い蕩ける甘い夜 ※

 障子の隙間から漏れる月の光が、ぼろ屋の畳に淡い影を落としていた。静かな夜の空気が、二人だけの世界をそっと包み込む。

 季音の心は、龍志の唇の熱に震えていた。柔らかく、けれど確かに彼の想いが伝わるその感触に、胸がどくどくと高鳴った。

 角度を変えて何度も食まれ、唇の隙間から舌が滑り込むと、接吻(くちづけ)は次第に深く、まるで溺れるような甘さに変わった。
 胸の奥は温かさに満ち、甘い痺れが身体を包む。こんなにも甘美で幸福な瞬間があるものかと、季音は思わずにはいられなかった。

「ふ……んぁ」

 蕩けるほどの多幸感に包まれ、季音は彼の導くままに畳の上にそっと横たえられた。

 脚の合間に龍志の身体が入り込み、間近で見た彼の(かんばせ)は艶めいて、黒曜石の双眸が甘い熱を帯びていた。

「……いいよな?」

 龍志の声は低く、抑えた響きを帯びていた。黒い瞳が、燭の揺れる光の下で季音をまっすぐに見つめる。そこにはいつもの揶揄う余裕はなく、ただ真摯な想いだけが宿っていた。

 季音は小さく頷いた。言葉にならないほど胸が熱く、ただ彼の眼差しに応えるように、桜色の唇をそっと綻ばせた。

 それを合図に、龍志の唇が再び触れた。今度はゆっくり、深く。甘い愛撫のような接吻(くちづけ)に、季音は目を閉じ、彼の温もりに身を委ねた。

 温かく、心を溶かすような幸福感に満たされていた。愛おしげに髪を撫でられ、甘く舌を絡められると、下腹部にじんわりとした熱が広がった。

 やがて、龍志の手が季音の首筋を滑り、薄い浴衣(ゆかた)越しに胸の丸みの輪郭をなぞる。こんな場所を触れられるなんて――どうしようもなく恥ずかしく、季音の頬が熱を帯びた。

「龍志様……」

 堪らず声をかけると、龍志は胸の丸みを確かめるように触れながら、頬にそっと唇を落とした。

「怖くはないか?」

 彼の甘みを帯びた艶やかな囁きが耳元で響き、吐息が首筋を(くすぐ)る。季音の心臓はまた大きく跳ねた。

「怖く……ありません。ただ、その、とても恥ずかしくて、でも龍志様となら……」

 季音は顔を上げ、龍志の瞳を見つめた。すると、彼の頬がほのかに紅潮し、恨めしそうに目を細めた。

「っ……まったく。お前ってやつは、本当に可愛いな」

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