愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~
だが、まさか時を越えて、彼に抱かれる夢が叶うなんて。絡めた指、甘い息、こんなにも彼を近くに感じられる。心臓の鼓動が彼と重なり合い、まるで二人の時間が永遠に続くかのよう。淡い月の光が、二人をそっと見守るように畳に揺れていた。
***
赤々とした曼珠沙華の群生の中、ぽつりと佇む藤棚の四阿。夕暮れの薄光が花々の赤を一層鮮やかに染め、静かな庭に妖しい空気を漂わせていた。
煙管をくゆらす狐は、藤色の瞳を細め、ゆっくりと煙を吐き出した。その白い煙が、曼珠沙華の赤に絡み合い、幽かな甘い香りと混じり合った。
「……よかったのう、さぞ幸せだろうね。深く繋がり幸せになるんじゃ、藤香」
――ああ、悍ましい、憎い。
そんな言葉を心の中で付け添えて、彼女は薄紅の唇を歪め、妖艶に笑んだ。その笑みに、どこか冷たく鋭い光が宿っていた。
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赤々とした曼珠沙華の群生の中、ぽつりと佇む藤棚の四阿。夕暮れの薄光が花々の赤を一層鮮やかに染め、静かな庭に妖しい空気を漂わせていた。
煙管をくゆらす狐は、藤色の瞳を細め、ゆっくりと煙を吐き出した。その白い煙が、曼珠沙華の赤に絡み合い、幽かな甘い香りと混じり合った。
「……よかったのう、さぞ幸せだろうね。深く繋がり幸せになるんじゃ、藤香」
――ああ、悍ましい、憎い。
そんな言葉を心の中で付け添えて、彼女は薄紅の唇を歪め、妖艶に笑んだ。その笑みに、どこか冷たく鋭い光が宿っていた。