愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~
「厄除けと縁結び……」

 なぜ息子の龍志ではなく自分に渡したのだろう。季音は小首を傾げて彼を見上げる。

「つまり、厄を断ち切り良い縁を結ぶ。そういうことだ。死者からの贈り物なんて複雑だろうが、受け取ってやってくれ。苦しき厄が降りかかっても、お前を少しは護ってくれるだろう」
「だけど、本当に私が受け取ってよろしいのですか?」
「いや、お前に渡したんだからお前が持ってろ」

 ――むしろ、素行の悪い愚息が持てば黄泉返って怨霊になりそうだ。なんて付け添えて、彼は穏やかに笑んだ。

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