青春とりもどせない症候群
彼が今まで見たことのない表情になった。

「生まれてくる子供のためにも籍を入れよう」
「ハイよー!!」と言う元気な声が聞こえた。もちろん私のじゃない。
「めんどい」
「素直になれよ!!」
「義務感でプロポーズされてもな」
「きみが好きだから言ってるんですけど!?」

あ、
外野が一斉にこっち見た。

「も、もう、
素直になれないことで大切なことやものを手放したくないんだ」
彼は、まわりに済みません、とひとしきり頭をぺこぺこ下げてから、私の目をまっすぐ見た。
「小さい頃欲しかったものを今手に入れても、小さい頃の気持ちには戻れない。我慢は必要だったけど、我慢しすぎたように思う。
俺と結婚してください」
「断る」
「あーーーーーーーーーーーーーーーー」

彼が頭に手をやった。頭痛がするらしい。

「今のままじゃダメ?」
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