青春とりもどせない症候群
彼が渋い顔になった。世界中の渋いものを一気に食べたような顔に。
「そんなに俺と結婚したくないの?」
「今がいちばん良い距離感だと思う。
逆に何できみは私と結婚したいの」
「きみが好きだし、子どもも好きだ」
「じゃあ今のままの距離でいよう。
好きなときにいっしょにいて、いっしょにいたくないときはいっしょにいない」
「……」
しばし彼が無言で私をにらんだ。私はその顔をぼんやりとながめていた。
曲が変わった。
「せめてきみと、きみたちと同じマンションに住みたい」
「なんで」
「俺は父親になりたい。家族と飛行機が飛ぶとこ見て、わーってしたい」
「乗るほう、ではなく?」
「乗るのが理想だけど今はそんな時期じゃないだろ」
私は、
テーブルに右ひじをついて、彼の顔を下から見上げた。にっこり笑顔で。
「良いよ」
彼がキラキラしはじめた。
「あ、結婚じゃなくて仮ひとつ屋根の下の話ね」
「わかったよ。受け入れるよ。
きみは不安じゃないの? 今、妊娠中だし、出産・育児。
まるで不安がないわけじゃないよね? てか不安だらけでしょ?
なんで俺を頼ってくれないの?」
「……」
私は、一瞬目を伏せて、それから、またにっこりと笑った。
「不安だよ」
彼はその一言だけですべてを察したようだった。
「そんなに俺と結婚したくないの?」
「今がいちばん良い距離感だと思う。
逆に何できみは私と結婚したいの」
「きみが好きだし、子どもも好きだ」
「じゃあ今のままの距離でいよう。
好きなときにいっしょにいて、いっしょにいたくないときはいっしょにいない」
「……」
しばし彼が無言で私をにらんだ。私はその顔をぼんやりとながめていた。
曲が変わった。
「せめてきみと、きみたちと同じマンションに住みたい」
「なんで」
「俺は父親になりたい。家族と飛行機が飛ぶとこ見て、わーってしたい」
「乗るほう、ではなく?」
「乗るのが理想だけど今はそんな時期じゃないだろ」
私は、
テーブルに右ひじをついて、彼の顔を下から見上げた。にっこり笑顔で。
「良いよ」
彼がキラキラしはじめた。
「あ、結婚じゃなくて仮ひとつ屋根の下の話ね」
「わかったよ。受け入れるよ。
きみは不安じゃないの? 今、妊娠中だし、出産・育児。
まるで不安がないわけじゃないよね? てか不安だらけでしょ?
なんで俺を頼ってくれないの?」
「……」
私は、一瞬目を伏せて、それから、またにっこりと笑った。
「不安だよ」
彼はその一言だけですべてを察したようだった。