甘く苦く君を思う
誕生日会当日。
渚は私の母にプレゼントされたピンクのワンピースを着せるとプリンセスみたいにかわいい。
日に日に昴さんに似てくるのを感じてしまう。彼の目元と額、それに笑った時の口元は本当にそっくりだった。
彼に会いたい、とふと思ってしまうが叶わぬ夢だ。
きっと彼は今頃彼の立場に会う人に支えてもらいながら仕事に邁進していることだろう。ネットで検索してしまえば彼の現況がわかってしまうほどの人。でも知りたくない。

私の両親と横井さん夫妻にお祝いされ渚はご機嫌だ。
2年前のあの日、この部屋で破水しどれほど焦ったことか思い出されるが、今となってはいい思い出だった。

「あの時の産声が今も思い出されるよ」

「そうよね、あなたはうちの子の出産よりも興奮してたわ。生まれたぞ! と大声上げちゃってね」

「そうでしたよね。分娩室の中からも聞こえてきました。でもその声になんだか胸がいっぱいになってしまって。あぁ、この子が生まれたことを喜んでくれている人がいるって心の底から嬉しかったです」

そばで遊び始めた渚の頭をそっと撫でた。

「本当に今だから言えるけど、あの時は腰を抜かすかと思ったのよ。急に連絡が来たと思ったら赤ちゃんの写真で、産みました、だもの」

母は思い出し笑いをしながらそう話す。

「沙夜はしっかりしている子だから、と思っていたらしっかりしすぎててひとりで出産しているし。でもね、本当に嬉しかったのよ。こんなかわいい孫に合わせてくれて」

渚をみる母の顔は優しさに溢れていた。あの時はどうして連絡することを躊躇っていたんだろうと不思議に思う。でも私も出産し、母親の立場になって考え方が変わったのかもしれない。
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