甘く苦く君を思う
「渚ちゃんももう2歳ね、早いわ」

渚の頭をそっと撫でながら幸子さんはしみじみ言う。私もその言葉に大きく頷いた。

「ままー、あめー」

指差した窓の外にはポツポツと降り始めた雨粒がついていた。こんな雨の日はなんだか心が落ち着かなかった。
いまだにあの雨宿りをした彼との出会いが頭をよぎるからだ。
食い入るように外を眺めていたが、強引に視線を外すと渚に目を向けた。
私にはこの子がいるじゃない。
もう過去は振り返らない。

「そうそう、今度の定休日に渚の誕生日をしようと思うんです。私の両親も平日なのに休むって言っているんです。幸子さんたちも是非来てください」

「是非行くわ。ご両親に会うのは久しぶりだわ」

産後幸子さんも私の母も何度となく顔を合わせていた。
それにいつの間にやら私の父と横井さんのご主人は会うとお酒を酌み交わすようになっていた。

「誕生日ケーキはじぃじが作るからな」

とご主人が言う。何やら渚とキャラクターのケーキを相談していたみたいだ。

「沙夜ちゃん、ごめんなさいね。あの人楽しみにしてて」

幸子さんが申し訳なさそうに言ってくるが私は首を振る。パティシエールの母としては作りたい気持ちもあるが、それでも可愛がってくれているご主人の好意はありがたく受け取りたいと思う。

「いいんです。私はお料理もありますし、お願いしたいです」

「そう? じぃじが喜ぶわ」
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