甘く苦く君を思う
「あの……、今日あと30分で終わるの。だから話を聞きます。でもこれでもう終わりにしてください」

彼に近づくと小さな声でそう言った。彼が小さく頷くのを見て、私も頷いた。
渚と話ながら私を待つふたりの姿に胸が苦しい。なんの話をするつもりなのだろうと心臓の音が騒がしい。

「なぎさちゃんはお昼に何を食べたい?」

13時になってしまう私の仕事を見ていて渚に昼ごはんを食べさせたいと思ったのだろう。子供を優先に考えてくれる彼の優しさにまたグッときた。

「うーんとー、ハンバーガー!」

私があまり食べさせないものをあえて言う姿にクスッと笑ってしまう。味も濃いしそんなに頻繁に食べさせたいものではない。でも子供はハンバーガーもポテトも大好きだ。彼は子供にハンバーガーを与えていいのか悩んでいるのか、そっと私の顔を見てきた。苦笑しながら頷くとそれを見て「いいね、ハンバーガーを食べに行こうか」と誘っていた。

「ままね、チーズなの」

「そうだね、ママはチーズが好きだよね」

さりげなく私の好きだったものの話になり顔が熱くなる。どうしてそんなこと覚えているんだろう。そもそも彼はこんなに毎週ここに通っていていいのだろうか。ご両親の話だと彼に見合う人と結婚することになるんじゃなかったのだろうか。ふとそんな疑問が浮かんできた。

仕事を終え、着替えると彼と一緒に渚の希望のハンバーガー屋さんに向かう。野菜が多く入っているし、お肉も安心できるものが使われているので値段は少しだけ高い。それでも子供には少しでも体にいいものを、と思いここに来る。

「ここで食べていく?」

彼に尋ねられ私は首を振る。

「いつもは買って公園に持って行くの。それでもいい?」

「もちろんだ」

ここで彼と話すのもなんだか落ち着かなさそうなので公園を提案すると彼は了承してくれる。
渚用の子供セットと私の好きなチーズとアボカドの入ったハンバーガーセット、彼はパテが2枚入ったボリュームのあるセットを注文するとさっと会計をされてしまった。
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