甘く苦く君を思う
あれから2日後の閉店間際、私はショーケースに入ったケーキを片付けていた。渚はいつものように片隅でお絵描きをしている。

「渚、もう少しで片付けが終わるよ。夕飯何にしようか」

「えー、っとー。なっとう!」

最近のお気に入りの納豆ご飯の話を始めていた。クスクスと笑いながら片付けをしているとお店のドアが開いた。

「いらっしゃ……いませ」

そこに立っている人たちを見て、思わず手にしていたトングを落としそうになってしまった。
どうして……。
まさかここに彼らがくるなんて思いもよらなかった。でも以前の出来事が一瞬にして蘇ってきた。手が震え始め、言葉が出てこない。
そんな中、彼の母親が一歩前に出てきたのを見てますます体がこわばる。

「相川さん……、突然お邪魔してごめんなさい」

母親だけでなく、父親も無言で頭を下げてきた。私はその様子に声が出せないほどに驚き、固まったままだ。
すると父親も一歩前に出てきて口を開いた。

「私たちがあの時あなたにしたことは決して許されるものではない……本当に、申し訳なかった」

その言葉にまたふたりが私に頭を下げる。重苦しい沈黙が広がるが、私はどうふたりに言葉を返せばいいのかわからない。
長い間抱えてきた胸の痛みも怒りも一気に込み上がってくる。
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