甘く苦く君を思う
渚はお昼を食べ終わる頃にはウトウトと船を漕ぎ始めた。
それを見兼ねて私が抱き上げ、寝かしてあげようとするとさっと昴さんは手を出してきた。その出された手に渚も素直に手を差し出す。
彼に抱かれ、しばらく背中をトントンとされているとあっという間に寝息が聞こえてきた。

「可愛いな……」

ふと小さな声が聞こえてきた。

「うん」

「沙夜の子なら愛せる自信はあった。でも、もしかしたらってどこかで思っていたんだ」

「うん」

「渚が俺と繋がっているとわかってさらに愛おしく思った。本当にありがとう」

彼はそういうと渚の頭に口付けをした。

「沙夜の両親に挨拶させてほしい。誠心誠意謝る。そして認めてもらえるようにしたい。それと店のご夫婦にも改めて挨拶させてほしい」

彼の真摯な言葉に私は頷く。

「私の両親とはあまりうまくいってなかったの。でも渚を産んで連絡してみたら、驚いていたけど本当に心配してくれてまた連絡を取り合うようになったの。この子が両親との仲を取り持ってくれたの」

「そうか。よかった」

「お店も、私がたまたま入った時に幸子さんが声をかけてくれたのがきっかけなの。本当にここにきてお世話になりっぱなし。出産前もだし、出産の時も立ち会ってくれた。それに育児も本当に助けてくれたの。横井さん夫妻には感謝してもしきれないくらいお世話になっているの」

その言葉に彼は頷いた。

「ご夫妻には本当に世話になったんだな。ル・ソレイユを辞めた沙夜がまた自分らしくいることができたのも、働くことができたのもあの人たちのおかげなんだな。俺も感謝してもしきれないな。きちんと挨拶をさせてほしい」

「うん。ありがとう」

私がそういうと彼の手が私の頭に伸びてきてポンポンとする。目が合うと彼はもう一度頷き、笑顔になった。それに釣られるように私もようやく笑顔を取り戻した。
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