甘く苦く君を思う
ある休日、彼に誘われ電車で海沿いの町へ行った。
海に行くなんて何年振りだろう。
砂浜に降りると潮風が優しく頬を撫でる。波音が心地よいリズムを刻んでいた。
波打ち際でサンダルを脱ぎ裸足になると海に入っていった。彼はそれをスマホで写真に撮っておりなんだか恥ずかしい。ようやく最近彼の名前をなんとか呼べるようになり、呼びかけた。

「す、す、昴さんも来て」

私の声に彼は笑って頷く。彼も履いていた靴を私のサンダルの横に並べるとやってきた。

「気持ちいいな。来てよかった」

そう言いながら顔をあげ、空を見上げる彼の姿はまるでモデルのよう。そんな彼の隣に並ぶのがこんな平凡な私で申し訳なさを感じてしまう。

「昴さんも久しぶりなの?」

彼ならばこんなデートスポットはよく訪れていたのではないかとつい勘繰ってしまう。きっとものすごく彼はモテたはずだから。

「学生の頃以来だな」

そんなに久しぶり?私は思わず、

「じゃ、デートはどんなところに行っていたの?」

そう口にしてしまった。言ってからすぐに言わなければよかったと思ったがもう出てしまった言葉は取り消せない。
彼と付き合うことでずっと気になっていた。
こんなに整った顔で、性格もいい彼がどうして私なんかと付き合っているのだろう、と。今までどんな素敵な人と付き合っていたのかとずっと気になっていた。そして彼が私と比べてどう思っているのかと悩んでいた。

「ごめん、なんでもない」

私はそう言うと彼に情けない顔を見られたくなくて、背を向け歩き出した。
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