英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 穏やかな空気と落ち着きのある彼の相槌に引っ張られるように、するすると言葉が湧いてくる。この人と会話をしていると、心が満たされるのはどうしてだろう。ずっと話していたい、そんな気持ちにさせられる。

 ふと視線を感じて顔を横に向けると、宝石のような瞳と目が合った。

「あっ……すみません、わたしったら、一方的にペラペラと」
「いや。……続きは食事をしながら話そうか」

 体の正面をこちらに向けた彼が、片方の手の平を差し出してきた。席までエスコートしようという所作だ。
 慣れぬ扱いに頬が熱くなるのを感じながら、そこに視線を落とす。

(なんだかドキドキするわ……)

 そうっと彼の手に、こちらの指先を重ねようとした、そのとき。
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