英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「戦況を不利とみて撤退することは、負けではありません。それに父君は娘煩悩な方だと聞いています。ご心配には及ばぬかと」

「そ、そうかしら……。えっ? 違いますわよ。不利がどうのではなくて、わたくしは心身に不調が出たため、仕方なく辞去したのです!」

「申し訳ありません。そうでしたね」

 彼のペースに翻弄されたイレーヌ姫は、すっかり憤慨した顔で食事に戻った。

(今のって、彼の冗談……?)

 笑っては失礼だと思い、しばらく下を向いていたが、ふと気になって隣に視線を流すと、同じようにこちらを意識した彼と目が合う。
 クールな瞳が優しく細められて、ドキッと胸が鳴った。通じ合うものを感じて、口元が緩んでしまう。
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