英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「あっ……!」

 突然、ドレスが足元に絡まり、つんのめった。床に突っ伏すことになったが、廊下には厚い絨毯が敷かれているので痛くはない。

 視線を感じて振り返れば、驚くほど近くにイレーヌ姫が立っていた。そのつま先は、しっかりと人のスカートの裾を踏みつけている。

「ふん、無様だこと」

 きつく睨まれて、怖くないといえば嘘になる。けれども、いい年をしたおとなが人を転ばせ、いきがっている姿は滑稽にも思えた。
 呆れ半分で黙っていると、追い打ちをかけるように敵意が降り注いでくる。

「これで勝ったと思わないことね。彼はもうすぐ別れる女に、情けをかけているだけなのだから」

 わたしはすっくと立ちあがり、ドレスの裾をパンパンと払いながら言い返した。
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