英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 レンガ造りの街並みは素朴で温かみがある。道のところどころに植えられた植栽には、モクレンに似た白い大ぶりの花が咲いていて、見た目にも麗しい。

(ここがルシウス様が治める街のひとつなのね。いつかまた、ゆっくり観光したいな……)

 だが、今は残念ながらそれどころではない。ロータリーの役目を果たす噴水広場に馬車を止めると、徒歩で行動に乗り出した。

 庶民的なメインストリートから少し奥に入り、落ち着いた高級店が立ち並ぶエリアに目星をつける。
 煌びやかなブティックや宝飾品店を巡り、店員に話を聞いたが、そう簡単に欲しい情報は集まらない。売却した日から時間が経っていることもあり、手がかりすらも掴めなかった。

 十軒近くを回って足に疲労を感じた頃、小さな呟きが耳に届いた。

「腹減ったなぁ~」
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