英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 はっと横を見ると、頭のうしろで手を組んだロキ君が退屈そうに宙を見ている。
 焦るあまり、ずっとつき添ってくれている彼のことを気遣えていなかった。気づけば空は橙色に染まり、日も暮れかけているではないか。

「ごめんね。もう帰ろうか……」
「まだ回っていない店があるんだろ? 片づけちゃえよ」

 そう言われて、通りの奥へと目を向けた。貴族御用達の雰囲気を漂わせた店舗が、一軒残っている。

「そうね、そしたらあのお店を最後にするわ。ロキ君、お腹が空いたんでしょう? 表の通りでなにか美味しいものを買って、食べていてもいいわよ」

 自分ひとりでも噴水広場に戻れるからと告げると、素直な彼は「わかった」と笑顔を見せる。馬車の前で待ち合わせることにして、その場で別れた。

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