英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 猫が食べても大丈夫と判断したものを与えておいて、わたしは目の前にあった食前酒を取り上げ、口に含んだ。すると食欲のなかった胃袋が活動を始めたみたい。ナイフとフォークを持ち上げ、お皿に向かう。冷えたスープも冷製スープと思えば十分に美味しい。

 愛らしい同席者のおかげで食事も進み、あとは簡単に後片づけをしたワゴンを廊下に出しておく。こうしておけば、メイドが食器を回収するのに役立つだろう。

 そのまま部屋に居ついてしまった猫は、しばらく好きにさせておいた。

 彼は気ままに過ごしていたけれど、わたしがカウチの上で足を伸ばし、踵の傷の様子を見ていると、するりとそばに寄ってきた。おいでと手を広げると、素直にお腹の上に乗ってくる。

「人に懐いているのね……。ひょっとしてアレクシアの飼い猫?」

 首のうしろを撫でながらそう尋ねると、彼は急に髭を逆立てて「みゃおみゃおッ!」と怒ったような声を上げた。違うと言っているらしい。
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