義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 翌朝――

「とりあえず、これでいいだろう」

 兄が差し出してきたのは、中学のときに着ていた学ランだった。

「これ、着るの……?」

 不安げに視線を向けると、父も母もにこにこと頷いている。まるで当然だと言わんばかりに。

 皆の圧に押され、私はしぶしぶ洗面所へ向かった。


 着替えて戻ると、待ってましたとばかりに視線が集まる。

「可愛い~!」

「なかなかの萌え系男子じゃないか」

「いいじゃん、イケてる!」

 次々に飛んでくる賛辞。

「ちっとも嬉しくない……」

 抵抗の意味を込めてにらみ返す。

 鏡に映る自分は、どう見ても学ラン姿の男子生徒。確かに「可愛い男の子」には見える。

 私はそっと俯いた。なんで、こんなことに。

 ふいに兄が肩を抱き寄せてきた。

「ほら、こうやって並ぶと美男兄弟じゃん! さっすが俺の妹。弟としても最強じゃん」

 鏡越しに笑う兄。励ましてくれているのはわかるけど、今の私には受け止めきれない。

「他人事だと思って……」

 ため息まじりに呟いたとき、兄が耳元で囁いた。

「大丈夫、唯は可愛いよ」

 思わぬ言葉に目を見開き、間近にある兄の顔に心臓が跳ねた。

「ひゃっ……!」

 驚いて思わず突き飛ばしてしまう。

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