義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 兄と私は肩を並べ、通い慣れた通学路を歩いていた。
 ただ一つ違うのは、今の私は“男の子”だということ。

「何、緊張してんの?」

 ぎこちない表情をしていた私に、兄がぐっと顔を近づけてきた。

「わあっ! もう、急に近づかないでって、いつも言ってるでしょ!」

 思わず声を上げると、兄は口をとがらせて私から離れる。
 ほんと無邪気なんだから。こっちの気持ちも知らないで。

「おまえさあ、口調が女みたいだぞ。もっと男らしくしろよ」

 兄に言われて、はっとした。
 そっか、今の私は男だった。気をつけなくちゃ。

「そ、そうかなあ。そんなことないんじゃないかな?」

 自分なりに考えた“男らしい口調”を真似てみる。
 すると、兄が声を上げて笑った。

「唯――じゃなかった、優。おまえ、面白いな!」

 けらけらと笑う兄に、私はぷくっと頬を膨らませる。

「おにい、じゃなかった……咲夜が言ったんでしょうが!」

 危ない。つい「お兄ちゃん」と呼びそうになった。
 気をつけないと。

 それにしても「咲夜」って呼ぶの、なんだか照れくさい。
 ……ほんとは、ちょっと嬉しいけど。

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