義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます

 私は料理が得意じゃない。
 いや、はっきり言って苦手だ。

 でも、流斗さんが喜んでくれるなら……頑張ろうかな。

 そんな考えがよぎったとき、兄が口を挟んできた。

「やめといたほうがいいぜ、流斗。こいつの料理は壊滅的だ」

「なんですって!」

 恥ずかしさと悔しさで、思わず声を上げてしまう。
 顔がカーッと熱くなっていくのがわかった。

「おい流斗、今ならまだ間に合うぞ。こいつとは別れたほうが身のためだ。
 家事はできねえし、怒るとすっげえ怖いし。もっと女子力の高い、いい女なんていくらでもいるだろ?」

 兄が私の欠点を次々に並べ立てる横で、私は怒りでプルプルと震えた。

「ちょっと……!」

 と言いかけたそのとき、私の手がふわりと包み込まれる。
 え……?

 驚いて顔を上げると、そこには流斗さんの優しい眼差しがあった。

「僕は唯さんと別れるつもりは毛頭ありません」

 穏やかな声。でも、その言葉はまっすぐで力強い。

「家庭的とか、女性的とか、そういう理由で唯さんに惹かれているわけではありませんから」

 その瞳には、確かな熱が宿っていた。
 心がぽっとあたたまり、頬もほんのり熱を帯びていく。

「大切なのは、今僕が愛しく思うのは、唯さんだということです」

 その真っ直ぐな視線に、胸がぎゅっと締めつけられる。

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