【書籍化】幼馴染のエリート外交官にカラダから堕とされそうです
 浩太がすかさず動きを止めて反応する。たった今彼女に対して囁いていた甘ったるい声とは正反対の、威嚇するような声色だ。
 好きで遭遇してしまったわけではないのに、なぜ私が声を荒げられなければならないのか。
 私は心を決めて、目の前の倉庫のドアをゆっくり開けた。


「か、楓……っ」


 浩太ががばっと女子社員から離れ、落ちていた服で体を隠す。
 今更そんなことしても、無駄なのに……
 私は大慌てで乱れた衣類を整えている浩太と女子社員を静かに見据えた。


「……もう、潮時でいいよ。会社で堂々とこんなことする人、こっちから願い下げだもの……」


 全部聞いていた、とその一言で伝わったのだろう。浩太はサーっと顔を青くして、急いで服を身につけながら駆け寄ってくる。


「か、かえでっ――」
「二人ともお幸せに」


 心にもない言葉を吐き捨て、私は扉を閉めて浩太を阻みその場をあとにした。
 浩太の様子を見るに、さっきのセックスの最中の言葉すべてが本心ではないのかもしれないが、そう言うことではない。
 激しい失望感と怒りに心が埋め尽くされ、これ以上彼を前にしていることが出来なかった。
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