陰キャな彼と高飛車な彼女 隠された裏の顔
1章: 裏の顔
スクリーン5に映し出されていたのは、5人組男性アイドルのアニメライブ。会場では観客たちがコールを入れ、色とりどりの星形ペンライトを振っている。歓声と音楽と熱気に包まれた空間は、まるで夜空に瞬く都会の灯りのように幻想的だった。
この日も、女性から圧倒的な支持を受けるラノベ恋愛小説家・天城セイラの代表作『流星5(ファイブ)―光と影を抱く五つ星のアイドル』を原作としたアニメライブが開催された。数年前から毎年行われている恒例イベントで、今回はその初日公演だった。
そんな中、一人の女性が腰をかがめながらシートの列を横切り、重いドアを押し開けて廊下へ出た。ドア一枚隔てただけなのに、さっきまでの熱気は嘘のように消え、静けさが広がっている。心なしか、肌寒さすら感じられた。彼女の名は──麻生夏來、30歳。
デニムにくすみ紫のスニーカー。ダークネイビーのTシャツには、推しである中性的な美青年セイ(メンバーの一人)のマンガイラストが大きくプリントされている。背中には黒いリュック。
ナチュラルメイクながら二重のアーモンド形の目が印象的。髪は無造作にまとめたラフなローポニーテール。
ここにいる誰も、彼女が普段はバリバリの営業社員だなんて想像しないだろう。
右手に紫色(セイのメンバーカラー)の星形ペンライトを握りしめ、夏來は一気に廊下を駆け出した。目指すのはグッズ販売コーナー。開演前にはすでに完売していたグッズが、この時間に補充されると販売員からこっそり教えてもらっていたのだ。
(どうしよう……せっかく当選した初日チケットなのに。ちょっと抜けてグッズをゲットする? それともTシャツは諦める? 抜けたらライブを見逃しちゃう。でもアニメライブなら、半年もすればDVDが出るはず……)
悩んだ末に、夏來は席を抜け出すことを選んだ。
(10分見られなくても、あとでDVDで補える。でも、セイのTシャツは今日しか手に入らない……冗談じゃない! 絶対に限定ハロウィンTシャツをゲットしなきゃ。大丈夫、あたしは最強運がいい!)
ペンライトを握る手にさらに力を込め、リュックを揺らしながらグッズ販売コーナーへと全力ダッシュした。
この日も、女性から圧倒的な支持を受けるラノベ恋愛小説家・天城セイラの代表作『流星5(ファイブ)―光と影を抱く五つ星のアイドル』を原作としたアニメライブが開催された。数年前から毎年行われている恒例イベントで、今回はその初日公演だった。
そんな中、一人の女性が腰をかがめながらシートの列を横切り、重いドアを押し開けて廊下へ出た。ドア一枚隔てただけなのに、さっきまでの熱気は嘘のように消え、静けさが広がっている。心なしか、肌寒さすら感じられた。彼女の名は──麻生夏來、30歳。
デニムにくすみ紫のスニーカー。ダークネイビーのTシャツには、推しである中性的な美青年セイ(メンバーの一人)のマンガイラストが大きくプリントされている。背中には黒いリュック。
ナチュラルメイクながら二重のアーモンド形の目が印象的。髪は無造作にまとめたラフなローポニーテール。
ここにいる誰も、彼女が普段はバリバリの営業社員だなんて想像しないだろう。
右手に紫色(セイのメンバーカラー)の星形ペンライトを握りしめ、夏來は一気に廊下を駆け出した。目指すのはグッズ販売コーナー。開演前にはすでに完売していたグッズが、この時間に補充されると販売員からこっそり教えてもらっていたのだ。
(どうしよう……せっかく当選した初日チケットなのに。ちょっと抜けてグッズをゲットする? それともTシャツは諦める? 抜けたらライブを見逃しちゃう。でもアニメライブなら、半年もすればDVDが出るはず……)
悩んだ末に、夏來は席を抜け出すことを選んだ。
(10分見られなくても、あとでDVDで補える。でも、セイのTシャツは今日しか手に入らない……冗談じゃない! 絶対に限定ハロウィンTシャツをゲットしなきゃ。大丈夫、あたしは最強運がいい!)
ペンライトを握る手にさらに力を込め、リュックを揺らしながらグッズ販売コーナーへと全力ダッシュした。
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