陰キャな彼と高飛車な彼女 隠された裏の顔
「うふふ〜、買えちゃった! あぁ、このハロウィン仕様のセイ君!! ヤバいくらい美しい……黒地Tに透き通る肌、薄紫のゴスロリシャツがエロすぎ!」
ゆっくり歩きながら、白い『流星5』ロゴ入りプラバッグの中を覗き込み、思わずニヤけてしまう三十路の夏來。
「はぁぁ……こんな子が現実にいたら、お姉さんが養ってあげるのに〜」
浮かれきった彼女は、前から来る人にまったく気づいていなかった。
ドスッ!
衝突の勢いでバッグを落とし、夏來は尻もちをついた。Tシャツ、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ハンドタオル――、中身が見事に散乱する。
「ぎゃぁぁぁ! あたしのセイ君がぁぁぁ!」
慌てて這いながら拾い集める姿は、まるで黒い甲羅のカメそのもの。
「……ああ、よかった。セイ君、傷ついてない」
ひとつずつ丁寧にチェックして袋へ戻す。
が、ホッとしたのも束の間。急に現実に引き戻された。
(ん? あたし、確か誰かとぶつかった……よね?)
勢いよく立ち上がり、相手に謝ろうと顔を上げた瞬間、夏來は息をのむ。
(う、うそ〜! キャァァァ、生身のセイ君じゃん! てか、セイ君より大人っぽくて色気がハンパないんですけどぉぉぉ‼︎)
チャコールグレーのスーツにライトシルバーのネクタイ。携帯を片手に立つその男性は、大きな目にすっと通った鼻筋、中性的な顔立ちに大人の色気をまとっていた。ゆるいウェーブの黒髪はワックスで後ろへ流されている。
(歩くフェロモンかよ! ああ、こんなセイ君、家に連れて帰りたぁぁい‼︎)
うっとりと見惚れる夏來。しかし、彼の怪訝そうな表情にハッと我に返った。
「す、すみませんでした!」
深く頭を下げ、両手でプラバッグを抱きしめるようにして早足でスクリーン5へ戻りだした。
そのとき、前から来た男性とすれ違いざまに耳に入った声。
「天城先生、もうお帰りですか?」
思わず立ち止まり振り返った夏來の目が見開かれる。
(えっ、えぇぇ〜っ! あ、あの『生身セイ君イケメン』が天城セイラ⁉︎ マ、マジ? 絶対顔出ししないって噂の? やっば〜! 『流星5』の作家さん見ちゃったよぉぉ。やっぱりあたしは最強運がいい!)
スキップしながらスクリーン5へ戻っていく夏來の後ろ姿を、天城セイラは苦笑しながら見つめていた。
そして小さくつぶやく。
「やっべー……あいつ営業部の高飛車女・『タカビー麻生』だろ? まさかこんな所で会うとはな。まあ、向こうは俺に気づかなかったみたいだし。……バリキャリのあいつが流星5の推し活? しかもセイ担? ――俺じゃんか!」
ゆっくり歩きながら、白い『流星5』ロゴ入りプラバッグの中を覗き込み、思わずニヤけてしまう三十路の夏來。
「はぁぁ……こんな子が現実にいたら、お姉さんが養ってあげるのに〜」
浮かれきった彼女は、前から来る人にまったく気づいていなかった。
ドスッ!
衝突の勢いでバッグを落とし、夏來は尻もちをついた。Tシャツ、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ハンドタオル――、中身が見事に散乱する。
「ぎゃぁぁぁ! あたしのセイ君がぁぁぁ!」
慌てて這いながら拾い集める姿は、まるで黒い甲羅のカメそのもの。
「……ああ、よかった。セイ君、傷ついてない」
ひとつずつ丁寧にチェックして袋へ戻す。
が、ホッとしたのも束の間。急に現実に引き戻された。
(ん? あたし、確か誰かとぶつかった……よね?)
勢いよく立ち上がり、相手に謝ろうと顔を上げた瞬間、夏來は息をのむ。
(う、うそ〜! キャァァァ、生身のセイ君じゃん! てか、セイ君より大人っぽくて色気がハンパないんですけどぉぉぉ‼︎)
チャコールグレーのスーツにライトシルバーのネクタイ。携帯を片手に立つその男性は、大きな目にすっと通った鼻筋、中性的な顔立ちに大人の色気をまとっていた。ゆるいウェーブの黒髪はワックスで後ろへ流されている。
(歩くフェロモンかよ! ああ、こんなセイ君、家に連れて帰りたぁぁい‼︎)
うっとりと見惚れる夏來。しかし、彼の怪訝そうな表情にハッと我に返った。
「す、すみませんでした!」
深く頭を下げ、両手でプラバッグを抱きしめるようにして早足でスクリーン5へ戻りだした。
そのとき、前から来た男性とすれ違いざまに耳に入った声。
「天城先生、もうお帰りですか?」
思わず立ち止まり振り返った夏來の目が見開かれる。
(えっ、えぇぇ〜っ! あ、あの『生身セイ君イケメン』が天城セイラ⁉︎ マ、マジ? 絶対顔出ししないって噂の? やっば〜! 『流星5』の作家さん見ちゃったよぉぉ。やっぱりあたしは最強運がいい!)
スキップしながらスクリーン5へ戻っていく夏來の後ろ姿を、天城セイラは苦笑しながら見つめていた。
そして小さくつぶやく。
「やっべー……あいつ営業部の高飛車女・『タカビー麻生』だろ? まさかこんな所で会うとはな。まあ、向こうは俺に気づかなかったみたいだし。……バリキャリのあいつが流星5の推し活? しかもセイ担? ――俺じゃんか!」