明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「とても、精悍な方で……よい方だと思います。」

そう前置きして、私は震える声で続けた。

「ですが……私には、心に決めた方がいるのです。」

「えっ?」

母が息を呑み、相手方のお父様が驚きの声を漏らす。

「ほう……?」

表情を険しくし、低く問いかけてきた。

「それはどんな方ですか。まさか我が息子の見合いを断ると?」

怒気を含んだ声音に、私は喉を詰まらせながらも必死に答えた。

「……同じ軍人の方です。お優しくて、実直で……私を誰よりも大切にしてくださる方です。」

父が眉をひそめ、母も狼狽えて私を見つめる。

けれど私は下を向かず、座敷に膝をついたまま言葉を重ねた。

「お願いです、お父様。その方と……私は添い遂げたいのです。」

張り詰めた空気が座敷を支配する。

相手方の父の顔に怒りの色が浮かび、父母の表情は青ざめていた。
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