明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
すると、お相手の方がふっと口元を綻ばせた。

「その方は……よほどあなたの心を捉えているのですね。」

その声音に、胸が大きく震えた。

――この声。聞き間違えるはずがない。

「……あなたは……」

私は思わず顔を上げ、その人を見据えた。

「雪乃さん。」

ゆっくりと、彼は目深にかぶっていた帽子を取り払った。

整った眉、精悍な顔立ち、そして何よりも――温かな眼差し。

「雪乃さん、俺です。」

「志郎さん!」

思わず声を上げ、息が止まる。

驚愕する私の隣で、志郎さんの両親が顔を見合わせた。
「知り合いなの?」

「……それどころか。」

志郎さんは静かに立ち上がり、まっすぐ父に頭を下げた。

「俺達は恋仲です。」

座敷に響いたその言葉に、両家の空気は一変した。

私は涙があふれ、ただ志郎さんを見つめることしかできなかった。
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