明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「恋仲⁉」

志郎さんのお父様が、驚きと戸惑いを隠せず声を上げた。

座敷の空気が一気に張りつめる。

「えっ⁉ お見合い相手だと知って、恋仲に⁉」

志郎さんのお父様は信じられないという顔で声を上げた。

志郎さんはまっすぐに言い返す。

「いいえ。お見合い相手だと知る前に、すでに雪乃さんとは恋仲でした。」

座敷に静寂が落ちる。

私の胸は早鐘を打ち、父母の反応を待った。

すると父が、堪えきれないとばかりに大笑いした。

「はっはっは! まさか見合いする前に、先に結婚の申し込みをしてくるとはな!」

「お父様……?」

私は呆然と父を見た。

「知ってたの⁉ お見合い相手が志郎さんだって。」

父はにやりと笑い、杯を掲げた。

「当たり前だろう。だからこそ“形式を通せ”と告げたのだ。

恋に浮かれて突っ走るだけでは世間は許さん。だが――筋を踏めば、誰も文句は言えん。」


< 110 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop