明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「……宜しくお願いします。」

その瞬間、志郎さんの表情が緩み、深く息を吐いた。

志郎さんは、立ち上がると父の前に進み出た。
座布団も使わず、畳に膝をつく。

「お父様。」

深く頭を下げ、声を張る。

「お見合いの席にこんなことを申し上げるのは、無礼だと承知しております。」

座敷にざわめきが走る。

志郎さんのお父様も、驚いたように目を見開いていた。

「ですが――どうか、雪乃さんとの結婚をお許し頂きたく。」

その言葉に、私の胸は震え、涙が込み上げた。

志郎さんはさらに頭を垂れ、叫ぶように告げた。

「お願いです! 雪乃さんを、俺の妻にください!」

場の空気は張りつめ、誰もが次の言葉を待っていた。

父はしばし黙して志郎さんを見つめ、やがて大きくため息をついた。

「……まったく。まさか見合いの場でここまで言うとは思わなんだ。」

そして、不意に頭を掻き、立ち上がった。

次の瞬間、父の手が志郎さんの肩に置かれる。
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