明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
冷たい液体が喉を通り過ぎると同時に、心の奥に熱いものが込み上げる。

「これにて、両家の縁は結ばれました。」

仲人の声が高らかに響いた瞬間、両家の父母が微笑み合った。

父の頬には厳しさを和らげた温もりがあり、母は涙ぐみながら私の背を撫でてくれた。

志郎さんは、盃を置いた私の手をそっと包み込む。

「雪乃……これからは、正式に俺の婚約者だ。」

その言葉に、涙があふれ、私はただ頷くしかなかった。

そして数日後、志郎さんは再び我が家を訪れた。

「これは婿殿。」

父は玄関先に現れるなり、にこやかにそう呼んだ。

つい先日まで厳しい顔を崩さなかった父が、今は上機嫌で志郎さんを迎えている。

「結婚の日取りも決まって、本当にめでたいことだ。」

嬉しそうに手を叩き、志郎さんを座敷へと導いた。

「これも、お父様のおかげです。」
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