明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
志郎さんは深々と頭を下げる。

「いやいや。」

父は豪快に笑い、徳利を手に取った。

「真心を示したのはおまえだ。私はただ、世間に筋を通させただけにすぎん。」

母も隣で頷き、優しい眼差しを私に向けた。

「雪乃、よかったわね。いいご縁を結ぶことができて。」

私は隣に座る志郎さんの横顔を見つめ、胸の奥が温かくなるのを感じた。

――夢のようだった。父に婿殿と呼ばれ、母に祝福される日が来るなんて。

やがて父が盃を掲げた。

「さあ、志郎。今日は存分に飲み交わそう。」

志郎さんは力強く頷き、盃を受け取った。

「はい。これからは雪乃さんを必ず守り抜きます。どうか、末永くお見守りください。」

その言葉に父母が笑みを交わし、座敷に穏やかな空気が満ちた。

私はただ涙を堪えながら、隣の志郎さんの手を握った。
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