明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
その夜。祝いの席がひと段落すると、父は盃を置き、志郎さんに声をかけた。

「婿殿。今日は泊まって行けばいい。」

志郎さんは一瞬、驚いたように目を見開き、それから私の方を振り向いた。

私は思わず視線を伏せ、胸が高鳴る。

「今までは……恋忍ぶ仲だったのだろう。」

父の言葉に、志郎さんは真っ直ぐに答えた。

「はい。」

「ならば、もう何も忍ぶ必要はない。」

その一言に、頬が熱くなり、どうしても顔を上げることができなかった。

――父が、私達の仲を正式に認めてくれた。

それが分かっただけで、胸の奥がじんと熱くなる。

「なあ、婿殿。」

父はにやりと笑い、徳利を傾けた。

「雪乃を、頼んだぞ。」

志郎さんは力強く頷いた。

「はい。必ず一生、大切にいたします。」

その言葉に母もほっと息をつき、座敷に和やかな空気が広がった。

こうして、父の後押しにより、志郎さんはその夜、我が家に泊まって行くこととなった。
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