明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「分かりました。私、その方と結婚します。」

ようやく絞り出した言葉に、父の顔がぱっと綻んだ。

「そうか、そうか。」

次の瞬間、父の腕に抱きしめられる。

「よかった……それがいい。おまえが心から幸せになるのを願っているよ。」

「……はい。」

震える声で返事をすると、父は満足げに笑みを浮かべ、足取りも軽く部屋を出ていった。

襖が閉まると、部屋は静寂に包まれる。

私は机の上に置かれていた小箱を手に取った。

蓋を開ければ、志郎さんから贈られた指輪がそこにある。

「……これも、もうお終い。」

震える指先で指輪をそっとカバンの奥に仕舞い込む。

光を失わせるように、見えない場所へと押しやった。

胸の奥がじんと痛み、息が苦しい。

愛しい人を思い浮かべれば、涙が込み上げてくる。

でも――これが私に与えられた運命なのだと、言い聞かせるしかなかった。
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