明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「見合いは、断った。」

志郎さんの低い声が、茶屋の座敷に響いた。

「えっ……」

驚きに目を見開く。

「俺には、好いた女がいるとはっきりと伝えた。」

息を呑んだ。

志郎さんが縁談を――あの縁談を、すでに断っていたなんて。

「……志郎さん。」

胸の奥が熱くなり、視線が絡まる。

「俺には雪乃しかいない。」

力強い言葉に、心臓が高鳴った。

見つめ合う瞳は熱を帯び、今にも唇が触れ合ってしまいそうだった。

けれど、震える声で口を開く。

「でも、私は……」

その言葉を遮るように、志郎さんの腕が私を抱きしめた。

「雪乃……もう迷うな。」

耳元に落ちる声は、決して揺らがない強さを宿している。

「もうお父上に、俺の想いを伝える。」

胸に響いたその言葉に、涙が溢れた。

――この人は、本当にすべてを賭けて、私を選んでくれるのだ。
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