明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「……お父様に?」

私は不安を隠せずに問いかけた。

もし志郎さんがそんなことを言ったら、父はきっと――。

「そんなこと言ったら、父が何て言うか……」

声が震える。

家のために縁談を受け入れるのが当然とされる時代。

父が激怒する姿を思うだけで、胸が締めつけられた。

けれど志郎さんは、揺るぎない瞳で私を見つめ返した。

「激怒されても構わない。」

きっぱりとした声音には、一片の迷いもなかった。

「俺には雪乃しかいないんだ。」

その瞬間、唇に柔らかな熱が落ちる。

不安を押し流すように、志郎さんは私に口づけをくれた。

「……志郎さん。」

涙がにじみ、胸が熱くなる。

彼は私の頬に手を添え、強く頷いた。

「いいね。俺はお父様に、直接直談判する。」

その言葉はまるで誓いのように、真っ直ぐに胸へと届いた。

怖い――けれど信じたい。

私は志郎さんの腕の中で、ただ強く頷いた。
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