この恋を運命にするために


 友達に言われたことがあるが、私は恋をすると盲目的になりやすい。
 好きな人のすべてがよく見えてしまうし、些細なことにすぐキュンとしてしまう。

 我ながらチョロいと思うけど、会って二度目にして信士さんのさりげない優しさに完全に落ちていた。


「せっかくなので、本当に質問してもいいですか?」


 信士さんにうっとりと見惚れていたが、ハッと我に返る。


「はいっ! なんでしょう?」
「こちらの花はなんというのですか?」
「オンシジュームです」
「オンシジューム? イメージと違ったな」
「有名なのは黄色いオンシジュームですけど、これはピンクですもんね」
「なるほど」
「こちらはすべてラン科の花で統一されてるんですよ」
「ああ、“蘭”だから」


 不意に呼び捨てされたみたいでドキッとした。


「素敵ですね。私も好きですよ、蘭の花」
「……!」


 自分のことではなく、花が好きだと言っていることはわかっている。
 それでもきゅうっと胸が締め付けられてしまう。


「好きです」


 そして口から無意識に漏れ出ていた。


「やっぱり信士さんのことが好きです。私じゃダメですか?」
「――、ダメと判断できるほど君のことを知りません」
「じゃあ知ってください。私ももっと信士さんのこと知りたいです」


 熱のこもった視線で信士さんのことを見つめる。


< 10 / 65 >

この作品をシェア

pagetop