この恋を運命にするために
はっきり言ってこの人のことは苦手だ。
軽いしチャラいし、こうして言い寄ってこられるのも迷惑でしかない。
だけどお得意様の息子さんだから邪険にするわけにもいかず、なあなあに濁してかわすのが精一杯だ。
「いつなら空いてるの?」
「えっと、しばらく立て込んでるんですよね〜」
本当はあなたに割く時間は一秒たりともありません、って言いたいところだけど流石に我慢。
生け花に興味なんかないくせに、早く帰ってくれないかしら。
「蘭さん、少しよろしいですか」
そこへ話しかけてきたのは、なんと信士さんだった。
「お花のことで聞きたいことがあるのですが、お話中ご迷惑でしたか?」
「あっ、いえ! 大丈夫です!」
信士さんから話しかけてくれるなんて……!
「すみません、八代さん。これで失礼します。是非楽しんでいってくださいね」
「あっ、蘭ちゃん!」
信士さんに話しかけられただけで頭の中がお花畑になってしまう。
しかも生け花に興味を持ってくださったみたいですごく嬉しい。
「どんな質問ですか? なんでもお答えします!」
「いえ、君が困っているように見えたから」
「え?」
「早く帰って欲しいって顔してた。違いますか?」
「あ……」
信士さん、助けてくれたのね――。
「ありがとうございます」
簡単にときめいてしまう私は、今のだけで更に好きになる。