この恋を運命にするために


 自分が一番こだわったところを褒めてもらえるのは、何より有難いことだ。
 淡々としているからこそ、この人は思ったことをそのまま述べているのだとわかった。

 お世辞などではなく、本心からそう思ってくれたのだ。


「やっぱり、信士さんの妻になりたいです」
「いや……話聞いてました?」


 流石の信士さんも呆れた口調になる。


「君のためを思って言ってるのに……」
「私のためと言ってくださるなら、一度デートしてください」
「え?」


 私は真剣な表情で信士さんの目を見ていう。


「お仕事が理由ではなく、私自身を見て判断して欲しいんです。デートしてみてそれでもダメだと思ったら、潔くフってください」
「……面白いですね」


 信士さんはふっ、と笑みをこぼす。


「わかりました」
「本当ですか!?」
「但し、仕事柄急に呼び出されることが多々あります。その場合迷わずデートをすっぽかしますが、それでもいいですか?」
「もちろんです!」


 信士さんとデートできる。それだけで充分だ。


「このデートで絶対好きにさせてみせます」
「ははっ、楽しみだね」


 信士さんは穏やかに笑っていた。
 きっと内心では好きになるはずがない、と思っているのだろう。

 もしダメだと思ったら、潔くフって欲しいと言った。
 だが私が諦めるかどうかはまた別の話だ。


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